紅葉映ゆる頃

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ふと…口ずさむ歌がある。 港町であった未春の郷里にある日流れ着いた異人が、まだ幼い彼女に教えてくれた歌。 「Close your eyes…」 目を閉じてごらん 想い描く夢は どんな色をしている? 目を開けてごらん 振り仰いだ空は どんな色をしている? 目を閉じてごらん 信じた言葉は 誰がくれたモノ? 目を開けてごらん ただ1つ見えたのは 誰の笑顔? あの頃は意味もわからずに、ただその異人に逢う度、この歌をせがんだ。 不思議な異国の調べと深く澄んだ歌声は、未春の小さな胸の奥底を掴んで離さず、苦しい程に高鳴らせて仕方なかった。 金糸の髪と空色の瞳を持つ異人…ミレイはせがまれるまま、何度でも歌ってくれた。 なかなかに日本語を操るミレイは、小さな未春を膝に乗せて自分の故郷の事を話し、いつも締めくくりに 「いつか大切な人とおいで」 と微笑むのだった。  
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