一、出会い

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「あんたはもう一度会社に電話してみて!」 女性は男性を見て言った。 「あ、ああ。」 男性は携帯を出した。 「もしもし、一時間前位にエレベーターが止まったって連絡したんだが…。停電だから勝手に直るとか言われたが、まだ動かないんだ。故障なんじゃないか!?とにかく早く来てくれ!生まれそうなんだ!え?何がって、エレベーターの中で生まれそうなんだよ!」 男性が携帯に怒鳴る。 また腰と下腹部に痛みが襲う。 「ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。痛いー!」 呼吸法をしようとしても上手に出来ず、痛いと叫びたくなる。 「よしよし、腰はここが痛いのかい?」 女性は私の腰をさすった。 「もう少し下!」 私は叫ぶ。 「はいはい、ここかい?」 女性は少し下をさすった。 私は頷いた。 「だから、一時間前も言ったけど、中津のコーポ那須だって言ってるだろ!は?一時間位かかるって?ふざけんな!こっちは緊急なんだ!救急車?レスキュー?わかった、とりあえず電話してみる。そっちも急いで来いよ!」 男性は携帯を耳から離した。
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