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「あ、もしもし。すみません、停電でエレベーターに閉じ込められまして、出れ次第すぐに向かいますので…。はい、はい、すみません、はい、失礼します。」
私は男性の話を片耳で聞きながら、右耳で呼び出し音を聞いていた。
「はい、STR管理会社です。」
電話には男性が出た。
「あ、すみません、中津にあるコーポ那須の住人なんですが。」
私は女性と目を合わせながら言った。
女性も私を見つめている。
「はい、どうしはりました?」
男性は言った。
「エレベーターが止まって、閉じ込められたんです。」
私は言った。
「どのような止まり方ですか?階と階の間ですか?電気はついてますか?」
男性は言った。
「突然止まって、電気も消えました。非常ボタンも効かなくて…。」
私は答えた。
電話を終えた男性も私を見ている。
「ああ、それならこっちは何も出来ませんな。停電ならすぐに回復するでしょう。エレベーター自体の問題なら向かいますがね。様子みはって下さい。」
電話の男性は私の返事も待たずに電話を切った。
私はゆっくりと携帯を耳から離した。
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