一、出会い

6/35

100人が本棚に入れています
本棚に追加
/835ページ
「ストレスかねぇ。ここから出れたら病院行った方がいいんじゃないかい?」 女性は私の隣に座って言った。 「ええ、そうします。」 私は目がチカチカするのを感じながら答えた。 下腹部のチクチクは、痛みに変わってきた。 五分間隔位で痛みが襲ってくる。 もしや、陣痛だろうか。 まだ九ヶ月なのに…。 「まだなのか?停電にしては長すぎじゃないか?」 男性が携帯を見ながら言った。 「そうさねぇ。もしかしたら停電じゃなくて故障かねぇ…。」 女性が答えた。 私は痛みで何も答えれなかった。 「停電なら、アパートの部屋も停電してるはずだよなぁ。」 男性は言った。 「そうさねぇ。」 女性は答えた。 「妊婦のねぇさん、家に旦那はいないのか。今日は日曜日だろ。」 男性は私を見て言った。 「いえ、誰も…。」 私は声を振り絞って答えた。 「じゃあ婆さんは?」 男性は女性を見て言った。 「爺さんには先立たれてね。私は一人身なんだよ。」 女性は言った。 「そうか…。俺も一人身だからな…。」 男性は肩を落として言った。 私は腰と下腹部の痛みが強くなり、顔をしかめた。
/835ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加