一、出会い

7/35
前へ
/835ページ
次へ
「大丈夫かい?もしかして、規則的に痛みが来てるのかい。」 女性は私の顔を覗き込み言った。 私は黙って頷いた。 「何てことだ!」 男性は叫んだ。 「初めての出産かい?」 女性は言った。 「はい。」 私は小さく答えた。 「おいおい!早くなんとかしないと、ここで生まれちまうぞ!」 男性は叫んだ。 「静かに!」 女性は男性の方を振り向いて言った。 「初めてならおそらくそんなすぐには生まれないはずだよ。私も十時間位かかったからね。旦那さんに連絡しなくてもいいのかい?」 女性は私の顔を見て言った。 「…旦那は、いません…。」 私は答えた。 「…一人で育てるのかい?」 女性は言った。 「はい…。う、痛い!」 私は下腹部と腰の痛みで、ただ座っていることが出来なくなった。 痛さを紛らわす為に体を揺らし、横になったり四つん這いになったりした。 「痛い痛い痛ーい!」 私は恥を忘れ叫んだ。 「落ちついて!痛みを逃す呼吸を習ってるんじゃないかい?それしてみなさい。」 女性は言った。 「ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。」 私は動きまわりながら呼吸法をしてみたが痛みはやはり強い。
/835ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加