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「私には、お父さんがいなくなって、とても悲しがっているように見えます」
「わかったような口きくな!!」
静香の言葉に、一気に頭に血が上って、気付けばまた怒鳴りつけ、近くにあった空き缶を静香に向かって投げていた。
ガン!と鈍い音がして、静香が顔を歪める。
額から、うっすらと血が流れた。
「よけろよ……」
「疲れて、足がもう動かないんです」
いつもすぐに泣くくせに、こんな時静香は痛そうに手で額を押さえながら、平気だと言わんばかりに無理に笑みを作った。
ベンチに座って、前に立つ静香を見る。
転んだのか、それともさっきのせいだろうか。
服はあちこち汚れていて。
膝は擦りむいて、擦り傷があって。
額からは俺がさっき投げた空き缶で、少し切って。
まさに、ぼろぼろだった。
今まで、俺を探してた?
宛もないのに?
慣れない繁華街にも来たんだろうか。
本当は怖いくせに。
なんで。
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