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丹崎君。フルネームは丹崎文博(たんざき ふみひろ)。私の危機を救ってくれたヒーローである。
例の味噌汁事件の翌日、12月1日土曜日。
私立校では授業がある事の多い土曜日だが、私立丸宮小学校では土曜日も休みだ。
その日、私は学校もないのに、朝家を出た。
何故なら、丹崎君に『あるもの』を渡したかったからだ。
月曜日に学校で渡すという手も有ったけど、学校で渡すのは恥ずかしかったし、丹崎君の家を知っていたからだ。
だって……
ピンポーン!
丹崎君の家のインターホンを押す私の視界に、学校の校舎が入っていた。
そう……丹崎君の家は、学校の直ぐ隣にあるのだ。
いつも、登校時に視界に入っていた表札を近くで見ると、その中に『文博』の文字がある。
『丹崎 波草
岬
千郷
文博
多美子』
と刻まれた表札の中で、『文博』の文字だけが輝いて見えた。
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