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気弱な担任が口を開くより前に、ある男子が言葉を発した。
「富田林、『味噌汁を台無しにされたから、篠村の味噌汁を頂く』なら分かるけどさ、『全て頂く』ってのは欲張りじゃないかな?」
少し震えていたが、ハッキリと言葉にしたその男子を、富田林はにらみつけた。
「丹崎(たんざき)、さっき何も言ってなかっただろうが!」
怒鳴る富田林に笑いながら、丹崎はこう言った。
「中々終わりそうにないからさ、お腹ペコペコで我慢出来ないんだよ。もうチャイムから15分以上経ってるよ?いつもならもう食べ終わっている頃だ。それに、さっきから怒鳴りまくってるけど、退学になりたいのかな?私立(わたくしりつ)の小学校は退学になる可能性も有るんだよ?公立とは違ってね。問題児として処理されたいなら何も言わないけど。」
さっきは少し震えていた声も、今は凛としていた。
その丹崎のセリフを聞いて、富田林は満美子の方を向くと、
「すまねぇ、ちょっと言いすぎた。俺は、ちょっと保健室言って来る。」
そう言って、富田林は教室を出ていった。
富田林が階段を完全に下りた事を確認すると、教室中に拍手の音が溢(あふ)れ、クラスメイト達は冷めた給食を食べ始めた。
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