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翌日、大学で講義を受けながら、ぼーっと深夜の番組を思い出していた。
――ポカ
「何ぼーっとしてるのよ」
一人の女性がポスターのようなものを丸めて、頭を叩いてきた。
「陽子…。いやぁ、昨日の深夜のさぁ…」
恋人であろうか。
そう言いかけた時、陽子がさえぎった。
「また、その番組の話?」
うんざり顔である。
「陽子も見てみろって。きっと感銘を受けるよ! 水曜の深夜だからな!」
「わかった、わかった。来週見てみるよ」
軽くあしらうように陽子は言った。
講義が終わると、一樹は資料室に行き地図を広げ
昨夜の番組で案内されていたエリアを探した。
番組内では的確な場所を言わないため、おおよその位置しかわからない。
「昨夜の場所はこの辺りかなぁ…」
そう言って、地図をコピーし、そこだと思われる場所に赤丸をした。
その光景を見ていた大学の友人の今野が声をかけてきた。
「かーずきっ。地図なんかコピーしてどうしたんだ?陽子と旅行にでも行くのか? 」
冷やかすようにニヤニヤしながら今野が言った。
「いや、あいつはだめだよ。風景の良さなんてわかりやしない。行くなら一人旅だな」
と、一樹は力強く言った。
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