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「君は知っているか?
1985年に起きた『イエスム号沈没事件』。実はその時俺はその船の乗務員で操舵手だったんだ。」
そう言ってしばらく思い出すように遠くを見つめて、しばらく沈黙した。
「……それと俺には唯一の家族がいたんだ。親父とお袋は早くに死んでしまってさ。弟がいた。…いたんだ。その船の客室乗務員として……俺と一緒に乗船していたんだ。もちろん、お嬢ちゃんのおじさんも一緒だった。」
『ボーーー』
豪華客船イエスム号は航海を始めた。
太陽が海に反射し、白い巨体なイエスム号は蒼く煌めいていた。
誰もが楽しい一時を過ごせると思っていた。
しかし、この船はいづれ沈んでしまう。
この悲しい運命は笹原を地獄へつきおとす。
悲劇的な話しを聞き、奈美は口を手で覆った。
そして甲斐は怒りに震えた。しかし、不思議な感覚が甲斐を包みこんだ。甲斐にはこの感覚がどのようなものかまだはっきりとは分からなかった……。
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