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雷を浴びたクラップの髪は毬栗の様に鋭く立ち、電圧の凄まじさを物語っている。
巨大な扇子は気絶した拍子に落とし、地上で待ち受けている猪の頭部に命中していた。
「ブギャーッ」
それに腹を立てたのか、猪は真っ逆様に落下して来るクラップに狙いを定め、下顎から伸びる対の牙を光らせて待ち構える。
全身を痙攣させながら猪の頭上に降り注ぐクラップは、再び窮地に追い込まれていた。
「シャオ、豚は任せたぞ!」
と、草村の茂みから突如として現れた男が叫び、猪に向かって駆け出した。
「どう見ても猪だと思うけど、ダーリンがそう言うなら豚でも良いわ。了解っ」
男に次いで姿を現した少女、シャオが、背負っていた木製の弓矢を手に持ち、腰に括り付けてある竹筒から矢を取り出した。
手慣れた感じで本体に矢をセットし、狙いを定めるのもそこそこに、それを放つ。
シャオの手から一直線に走る矢は、見事に命中した。
男の尻に。
「あがががー! 痛ってえ!」
両手で尻を押さえ、男は飛び跳ねながら体を仰け反らせる。
「あーっ、ごめんねダーリン。またやっちゃったー」
琥珀色のショートボブを指で掻き、シャオは健康的な赤い舌を出した。悪気は無いらしい。
「ひーっ。ちきしょうっ、お前これで何度目だ!? わざとやってんだろ、絶対!」
うつ伏せに倒れ込んだ男は、首だけをシャオに向け、半泣きでそう訴えた。
「まっさかー。ダーリンにそんな事する訳――あっ」
シャオが弁明しようとしたその時、二人にすっかり忘れられていたクラップは、敢えなく猪の餌食となっていた。
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