「彼」

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透が買ってくれたマグカップだ。 素直な言葉を返せなかった千早だが、実はとてもときめいたのは内緒だ。 ソファの上で膝を抱えマグカップを見つめる。 ふわふわと揺れる湯気の向こうで、観葉植物が見えた。 部屋の隅、窓際にあるそれの緑。葉っぱがクーラーの風で微かに動いた。 冬が去り、春になり、もう少しで夏真っ盛りという時期だ。 それでもクーラーを付ける程でも無いというのに、この部屋は完璧な空調設備だ。
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