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「そうだね。麻里の言う通りだと思います」
『あの話』とは結婚の話し。
最近、ちょくちょく麻里の家に行ってはちくりちくりとその話しをしてくる。
よく、彼女を僕に下さいとか、結婚を認めて下さいとか言うと、必ず相手の両親に反対されるのが普通だけど、俺達は付き合いが長いという事と付き合い始めに会った時から思いのほか、気に入られて、反対する立場の麻里の両親は一人娘なのに関わらず、麻里を一生大切にしてやってくれとまで言ってくる。
確かに反対されない分、楽だけど結婚はそれなりに大変だと思っているし、逆にいつも麻里の両親に結婚の話しをされると、結婚をしにくくなるのも事実だ。
そのせいか、行く度に俺は何となく、話しを避けてしまっていた。
気軽に話せるが、だからといって緊張しない訳でもない。
ゆくゆくは結婚の挨拶をしなきゃいけない相手だから、多少の緊張はする。
そのぐらいの緊張をしていた方がいいのかも知れない。
さすがに軽々しくは出来ないし。
そう思いながらも、麻里の両親と会う事に少し楽しみな自分もいる。
「親の話しはこれで終わりとして。
今日、出掛けるのやめる?調子悪いんだったら、無理しなくていいよ」
そうだ。今日は麻里が買い物に行きたいから連れてってと言っていた。
「ん?そんなにめちゃめちゃ悪い訳じゃないし、平気だよ。
買い物行きたいって言ってたよね?」
「うん!実は武蔵村山にあるショッピングモールに連れてって欲しいなぁ~って。
友達は遠いって言うし、一人で行ってもつまんないし、それに透吾の車でドライブがてら行った方が楽しいなって思って」
「そうなんだって、何気にいいように俺は使われてない?」
「うっ!痛いトコをついてきたね。でも、透吾と行きたいとは思ってたよ。友達と行ってても、透吾を連れて行って、一緒に買い物したいって思ってたし」
「そういう考えなら許す。まぁ~、俺も行った事なかったしね。
行きますか!」
「やったぁ~!」
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