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「ぁー…」
「はいはい、今度は何色だい」
しかし困ったことに、どうやらこの子は口が利けないらしい。人間の言葉は理解できるが━━まぁほぼ人間だし━━それについての反応は、頷くか困惑するかのどちらかしかない。そうされるとひばりも言葉を選ばなければならないので少々まどろっこしい会話が続いた。
「あか?」
「ぅ゛ー…」
「……わからないから全部あげる」
押し入れから引っ張り出した何時しかのクレヨンを、ばらばらと机に撒き散らすと、つなよしはきゃっきゃきゃっきゃと楽しそうに声を漏らす。
「……、」
はじめのうちは自分の名前は言えたのにと不思議に思ったが、母親か誰かが何かあった時のためにそれだけでも覚えさせたのだろうと、考えを改める。
「聞きたいことはたくさんあるけど…」
言葉なんて生活していく中で覚えていくだろう。焦ることも無い。
とりあえず今は、お絵かきに集中する彼を邪魔しないよう、ゆっくりコーヒーでも飲むとしよう。
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