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「………。」
ようやく冬が終わり桜が咲き始める頃、ひばりの機嫌は最悪だった。何故人は春となるとこうも活発になるのだろうか、毎年のことだがため息しか出ない。
家の隣りにある公園は絶好のお花見スポットで朝から人々が賑わっていたが、ひばりは勿論それには参加せず、むしろ腹を立てていた。
五月蠅くておちおち昼寝も出来やしない。
しかし、いくら自分の家が隣にあるからといって公共の場である公園に文句をつけるのも何だ。第一、春以外は常連である自分にとっても万が一公園が無くなるなんてことがあっては困る。結局群れる者共に対して何も言えないのが現状である。
「君、どこの子」
気分転換にと、外に出てみればこれだ。
3、4才くらいだろうか。玄関先には、もう春だというのに深々とニット帽を被り、長さの違うだぼだぼのセーターを2枚も着ている子供が一人蹲っていた。何やらやたら汚れている。
「…ここは雲雀の土地だよ、公園はあっち」
大方花見に来て迷子になった子だろうと、公園への道なりを指さしてやるが、こちらを見てぶるぶると怯えるだけで動こうとしない。
「………何なのさ…」
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