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ママは一緒じゃないの?どこからきたの?名前は?
なるべく優しく話し掛けるひばりの行為も虚しく、目の前の子はただ首を横にぶんぶんと振るだけだった。
「それじゃわからないよ。なんとか言ったらどうなんだい」
「ママ~助けて~怖いよ~」
「………、」
やらしい声に振り向くと、そこには明らかに悪そうな中年の男。手には小型のナイフが握られている。脅しの道具だろうか、バカバカしい。
「や~っと見つけたよ、きつねちゃん。ほら、おじさんがママのところへ連れてってあげる」
「誰、あんた」
「その子の連れだ。あぁあぁ、こんなに怯えて。怖かったねぇ」
そう言ってのそりと近付く男に対し、ひばりの足元に隠れる迷い子は、涙目になりながら必死で相手を睨んだ。そうしながらも、ひばりのズボンをきゅっと握り締める手は震えていた。その光景に思わず頬を緩める。
「はっ、あんたのその汚い顔見て怯えてるように見えるけど?」
「~~…こんの糞餓鬼」
勢いよく鼻で笑ってやると、握られたナイフはひばりへと向けられた。
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