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ナイフ片手に襲いかかってきた男は残念ながらと言うのか、当たり前と言うのか遊び相手にすらならなかった。覚えてろ!なんて古い捨て台詞を吐いて逃げ去る男の姿は滑稽で、ついまた鼻で笑ってしまう。
「さて……、」
まだびくびくと震える足元の子に目線を合わせてやる。改めて見てみると手やら足やら、相当傷付いていることに気付く。ずっと追われていたのだろうか。
「自分の名前くらいはわかるだろ?」
ぽろぽろと落ちる涙を拭い、頭を撫でてやると、落ち着いたのかやっとその子は口を開いた。
「っ…、つな…よし…」
「そう、つなよし」
「……」
「…………」
「……、」
「とりあえず、風呂入ろうか」
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