お祭り男爵とお祭り女王のお話

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「ゲフゥ…!!」 体を起こす…蹴られる…起こす…蹴られる…起こす…蹴られる…起こす…蹴られる……… このコンボが続き男は顔の形が跡形もなく変わり果て、血を流しながら完全に気絶した。 ヒューイは血がついた足を焼きそば屋の服に塗り付けて拭いた。 ……酷過ぎる…… 「お祭男爵無手奥義!!自分より大きいやつは転ばしてから立ち上がる前に顔をピンポイントで蹴り飛ばし続けろ脚!!」 ……辺りに沈黙の時間が訪れた。 ふっ……皆俺の華麗な技に声も出ないようだな。 実際はあまりのネーミングセンスと酷い攻撃、そして今だに身につけているひょっとこのお面に言葉も出ないだけだろうが…… ヒューイは軽く息をつき、焼きそば屋に殴られ蹴られ傷だらけになっている少年と顔を殴られ赤く腫れて泣きじゃくる少女に声を掛ける。 「おい……大丈夫か?悪い、人込みが凄くて助けるの遅れた……」 少女は泣いたままで反応がない為、あちこち怪我している少年が答えた。 「ありがとうお祭り男爵!!なんとか……大丈夫かな……?」 少年の言葉に安心したように表情を緩め、ヒューイは懐から丸い容器に入った塗り薬を取り出して投げ渡す。 少年は左手で器用にキャッチした。 「俺が常備している回復魔術が込められた即効性のある傷薬だ。塗るといい」 「魔術の傷薬!?それって物凄い高いんじゃあ!?」 魔術が込められた薬と言うのは作るのに手間と技術が必要とされるが、通常の薬とは違い回復魔術と同じ即効性があり、通常の薬の数十倍の値段がする。 「気にすんな」 手で制し事もなげに言うヒューイ。 まあ、どうせ無料でもらった王からの支給品だしな。 「ありがとう男爵!!あ、俺ヒロって言うんだ!!あっちはラン」 ヒロは塗り薬を手で持て余しつつ笑顔を見せお礼を言った。 「お……おう!まずはそっちの女に塗ってやれよ?」 少年の素直な感謝の言葉にヒューイは感謝されるのに慣れてないせいか吃ってしまった。 「……俺右手痛くて使えないんだ……男爵が塗ってやってくれないか?」 成る程……さっきから左手しか使ってなかったな…… ヒロの右手は紫に痛々しく腫れ上がり出血している。 「うあ……お前のが酷過ぎじゃないか……やっぱりお前が先だ」
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