お祭り男爵とお祭り女王のお話

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ヒロの痛々しい指、そして殴られた顔や見える範囲の怪我している部分に薬を塗ってやる。 指で痛む部分を刺激された為、ヒロの顔が苦痛に歪む。 「ぐっ……痛っ……」 「……我慢しろ。いや、よくそんなになってんのに我慢できたな……普通そっちの女みたいに泣くか叫ぶぞ」 憎まれ口を叩きながらも感心して呟いた。 その問いにヒロは痛みを堪え、表情を歪めながら答える。 「……俺昔から痛みには強くてな」 「……成る程……これが噂に聞くドM……か……戦場ではある意味有利かもしれないな。感じながら死ねるんだろうか?」 ヒューイは顎に手をやり、何やら真剣な表情でぶつぶつ言い始めた。 「おい、男爵。なんか妙な方向に勘違いしてないか……?」 「気にすんな!!趣味は人それぞれだ!!」 ヒューイは人を気遣う慈悲の心を宿したエンジェルスマイルで言った。 「だから違ぁぁぁぁう!!」 ヒューイは無言になり心にヒロはドMと心に刻みつけるように、うんうんと首を縦に振る。 薬を塗り終えると白い癒しの光が輝き出し、みるみる内に腫れが引いて見た目は元に戻っていった。 ヒロはその不思議な光景を見て感嘆の声を漏らす。 「凄い……」 「ちょっと指触るから痛かったら言えよ?」 ヒロの傷の治りを確かめる為か、指をちょんと突いた。 「ぐぅぅ!」 ヒロはうめき声を漏らし、顔がみるみる内に苦悶の表情に変わった。 「んー、今の薬は外傷にしか効果がないから……これは最悪折れてるかヒビが入ってるな」 「マジか……?」 「ああ、早く帰って医者か僧侶の所へ行け。俺じゃ満足に治療できない」 いくつもの修羅場をくぐり抜け培ってきた経験により的確に診断したヒューイは、ランと呼ばれた少女に薬を塗ってやる為に少女の前に行く。 少女を見ると今だに泣きじゃくっていた。 「ヒロ、こいつまだ泣いているんだけど……普通さすがにもう泣き止むだろ。お前の彼女か?」 「違ぁうよぉぉ!!うわぁぁぁん!!」 二人の話を泣きじゃくりながらもしっかり聞いていたようで即答する少女。 「ヒロ、即答されたぞ……可哀相にな」 高速で否定されたヒロに、なにやら哀れみの視線を向けるヒューイ。 「違ぁぁう!ただの親戚だし!!親に子守頼まれただけだ!!」
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