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「お祭り女王?この泣き虫が!?」
ヒューイは予想をしていなかった人物との遭遇に驚いたような顔を見せる。
もっとこう……ホーホッホホ!わたくしの華麗なるヨーヨーさばきに酔いしれてごらんあそばせえ!
……とか高笑いする訳分からない奴がお祭り女王なのかと思ってた……
「ああ、知ってるのか?」
ヒロはヒューイが知っているとは思っていなかったのか不思議そうな顔をした。
「まあ……噂を聞いて見つけたら勝負しようかと思ってたんだけど」
こんな泣き虫がお祭り女王?マジでか……むしろ泣き虫女王……
ヒロはヒューイの言葉を聞いて何か思い付いたのかニヤリと笑い口を開く。
「男爵、俺怪我の治療してくるからその間ランを見ててくれないか?」
ヒューイは有り得ない、いきなりな提案に驚愕の表情で目を見開いた。
「はぁ!?こんな厄介な奴と!?てか初対面の奴に頼むか普通!?」
なんとか回避しようとしてか正論をぶつけた。
「大丈夫!ランは昔から人見知りだが、その分人を見分ける目は敏感で人一倍あるんだよ。ランが男に惚れるなんてありえないことなんだぞ」
頼む!と手を合わせるヒロ。右手が痛いのを忘れたのか合わせたあと痛みに苦悶の表情を浮かべた。
そんなヒロを見て思わず苦笑する。
……バカな奴だな。何百人も人を殺してる俺がいい人間な訳ないだろ……けど……な……
「仕方ないなぁ……早く帰ってこいよ?」
ヒロの言葉やランの好意は嫌ではなく、くすぐったいが嬉しい。
口が裂けても言わないけどな……
「ふぇぇぇん!!ありがとぉぉ男爵ぅぅぅ!!」
後ろから聞こえた声に振り返るとランがバッファローの如し勢いで抱きついてきた。
「ギャーーー!!止めろぉぉぉ!!また涙と鼻水が浴衣にぃぃぃ!!」
金魚屋に続き本日二回目になる熱い抱擁に叫ぶヒューイ。
「ハハハ!じゃあ男爵、ランは任せたぞ!ランなるべく早く帰ってくるからな」
安心したように笑い、そう言ってヒロは走り去って行った。
「離れろぉぉぉ!!」
ヒューイとランはヒロに気付かないまま熱戦を繰り広げている。
「うわぁぁぁん!!嫌やぁぁぁ!!嫌わんとってぇぇぇ!!」
泣き叫び周囲の視線を欲しいままにするお祭り女王様。
「嫌ってないから離れろぉぉぉ!!」
「じゃあラン大好き言うてぇぇぇ!!」
二人の見苦しいやり取りは周りの野次馬達が注目する中十分程続いた。
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