お祭り男爵とお祭り女王のお話

16/42
前へ
/50ページ
次へ
「はぁ……はぁ……はぁ……と…とりあえず……屋台……回ろうか?」 浴衣が乱れ、叫び続けたせいで息が荒れるヒューイ。 「うん!」 なぜか元気いっぱいのラン。 なんでこんなに元気なんだこいつ……いつも一時間泣きじゃくってる成果か……? なんとかランを説得して離れてもらい、二人に注目していた野次馬達も散り散りに消えて行った。 「ん?」 あの焼きそば屋の親父がいないな……逃げたか?ランのせいで気付かなかったな。大丈夫か……? 「どないしたぁん?」 何も知らない無邪気な笑顔で聞いてくるラン。 わざわざ不安にさせる必要もないか…… 「なんでもない」 まあ、大丈夫かな。見た目だけでめちゃめちゃ弱かったし、あれだけやればもう襲う力もないだろう。 あれ……?そういえば…… ふと疑問に気付いた様子でヒューイは眉をひそめる。 「そういえば、なんでお前達あの焼きそば屋に殴られてたんだ?」 ランは困ったとでも言うように眉をハの字にして言う。 「うちなぁ……料理得意やねん……あ!ここは覚えといてや、未来の旦那さまやもんな!」 「違うけどな」 即座の否定も聞こえなかったかのように、構わず続けるラン。 「あのおっちゃんの焼きそばめちゃめちゃまずかってん……それでつい『まずっ』って言うてもうて……それでな」 その味を思い出したのか顔をしかめた後、ハハハと笑ってごまかすラン。 「お前さ……それは怒るだろ?」 呆れ顔でランに軽くでこぴんをするヒューイ。 「あぅっ……けどまず過ぎて……食べてみてや」 ランは勝手に作り置きの焼きそばを持ってきてヒューイに渡す。 いいのかそれ!?……まあ、慰謝料がわりに貰うか……俺のじゃないけど。 ヒューイは促されるまま箸を受け取り焼きそばを啜る。 咀嚼を続け途中で動きが止まり、目をくわっと見開いた。 こ……これは!?
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

785人が本棚に入れています
本棚に追加