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「はぁ……はぁ……はぁ……と…とりあえず……屋台……回ろうか?」
浴衣が乱れ、叫び続けたせいで息が荒れるヒューイ。
「うん!」
なぜか元気いっぱいのラン。
なんでこんなに元気なんだこいつ……いつも一時間泣きじゃくってる成果か……?
なんとかランを説得して離れてもらい、二人に注目していた野次馬達も散り散りに消えて行った。
「ん?」
あの焼きそば屋の親父がいないな……逃げたか?ランのせいで気付かなかったな。大丈夫か……?
「どないしたぁん?」
何も知らない無邪気な笑顔で聞いてくるラン。
わざわざ不安にさせる必要もないか……
「なんでもない」
まあ、大丈夫かな。見た目だけでめちゃめちゃ弱かったし、あれだけやればもう襲う力もないだろう。
あれ……?そういえば……
ふと疑問に気付いた様子でヒューイは眉をひそめる。
「そういえば、なんでお前達あの焼きそば屋に殴られてたんだ?」
ランは困ったとでも言うように眉をハの字にして言う。
「うちなぁ……料理得意やねん……あ!ここは覚えといてや、未来の旦那さまやもんな!」
「違うけどな」
即座の否定も聞こえなかったかのように、構わず続けるラン。
「あのおっちゃんの焼きそばめちゃめちゃまずかってん……それでつい『まずっ』って言うてもうて……それでな」
その味を思い出したのか顔をしかめた後、ハハハと笑ってごまかすラン。
「お前さ……それは怒るだろ?」
呆れ顔でランに軽くでこぴんをするヒューイ。
「あぅっ……けどまず過ぎて……食べてみてや」
ランは勝手に作り置きの焼きそばを持ってきてヒューイに渡す。
いいのかそれ!?……まあ、慰謝料がわりに貰うか……俺のじゃないけど。
ヒューイは促されるまま箸を受け取り焼きそばを啜る。
咀嚼を続け途中で動きが止まり、目をくわっと見開いた。
こ……これは!?
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