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泣いている少年がいた。
年の頃は五歳くらいで黒髪に赤い瞳をしていて、ところどころ真新しい火傷の跡がある。
泣きながら誰かの墓を作っていた。
土を集め固めて石を乗せて作る幼い少年が今作れる精一杯の墓だ。
――時は少し前に遡る――
何の前触れもなく少年が住んでいる村に空から何かが降ってきた。
赤い鱗に覆われ全長十メートルもある魔物、火竜だ。
……村は火竜のブレスによって燃やされ、建物は崩れさり、村人は次々と殺されていった。
炎が爆ぜる音が聞こえ、建物が焼ける匂いが広がり身を焦がす程の熱気が漂う。
そんな中戦える者は武器を取り切り掛かり、魔術が使える者は長い呪文を唱え炎や雷の集中砲火を試みた。
しかし……
無駄だった……
竜の鋼の鱗に傷を付ける事さえも出来ず、村人が使える程度では竜にとってはそよ風となんら変わらない。
ただ……竜の怒りを買うだけだった……
絶望の中、少年の両親は少年を逃がす為に少年をかばって死んだ。
村人もほとんどが全滅していった。少年は必死で逃げたが村の外に逃げる前に炎に囲まれ酸欠で倒れる。
少年が目を覚ますとあれほど燃え盛っていた炎は消え、火竜はどこにもいなくっていた……少年が目を覚まし見た者は見知った顔の死体の山だ……泣く事も忘れ呆然とする。
ずっとそのままでいるわけにもいかず、少年は歩きだし両親の死体を探し当ててやっと泣いた……
涙が枯れるくらい泣いた……
泣きつかれ眠ってしまった後、目を覚ました少年は両親と村人の為に一つの大きな墓を作った。
そして誓う……自分は強くなる。守りたい人を守れるくらい。誰にも負けないように。自分に力さえあれば何も失わずにすむのだからと……
少年は崩れ落ちたかつて武器屋だった瓦礫の山から剣を見つけ出し、必要な道具やお金を悪いと思いながらも拝借した。
全ては生きる為に……ただひたすら力を求める為だけに……
少年は生まれて初めて握る剣の重さを噛み締めながら修業の旅に出る。
そして五年の歳月が流れる――――
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