お祭り男爵とお祭り女王のお話

19/42
前へ
/50ページ
次へ
結局ランはヒューイの腕から離れず、ぴったりと寄り添い祭を回ることになった。 どの店に行くのか辺りを見回していると、好みの店を見つけたのかある店を指差す。 ヒューイが指差した店は射的屋だ。色々な種類の景品が並んでいる。 「ラン射的やるか?」 「うん!やるぅ!」 射的は簡単に説明するとゴムで金属製の二センチ程度の丸い玉を飛ばして景品を倒したら貰えるというわけである。 「おっちゃん!二回分やらして!」 ハッピを着た威勢のいいおやじが答える。 「はい毎度!一回で玉三発だよ!さあ、頑張りな!」 お金を渡して玉とゴムを貰った。ヒューイは腕にしがみつきホクホク笑顔のランに声を掛ける。 「ラン、俺からやるから……いい加減離れてくれないか?」 「むうぅ……」 ランは不満げに渋々頷きヒューイから離れた。 しかし、この射的もよく出来てるよな。 ゴムは自分の腕の分までしか伸ばせないのだから、威力も制限される。 ヒューイの場合は手で投げた方が威力が段違いである。 的は……お菓子にぬいぐるみ、時計にティッシュ、本…… まあ、明らかにいらないものも多いな。 キョロキョロと視線をさ迷わせ欲しい物を探す。 ん!?あれは世界の拷問抜粋百選!!あんなレアな本が射的屋に!? 販売当時全く売れずに人気皆無のために店頭ではなかなかお目に掛かれず品薄で、今では貴重な本である。 マニアの間では高値で取引されているのだが…… 無造作に置いてあるとはこの親父知らないようだな。チャーンス! 問題は一発じゃあ到底倒れないってことだよな……
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

785人が本棚に入れています
本棚に追加