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日が沈み辺りは暗く夜の景色が広がっている。
神社へ続く道では太鼓や笛による祭囃子が高らかに鳴り響き、提灯による明かりが燈されていた。
多くの屋台が並び、人が絶え間無く行き交い賑やかな喧騒や熱気を生み出している。
そんな屋台の一つである、金魚すくいの水槽の前に年の頃は十歳程である、黒髪で少し目つきの悪い赤い瞳をした浴衣を着た一人の少年がしゃがんでいた。
その少年は金魚をすくう紙でできた網を片手に持ちじっと見つめる。
少年の周りには人だかりができ、皆が少年に視線を向けその一挙一動に注目しているようだ。
少年は真剣な表情で水面を鋭い眼光で見つめ、網を持った手徐々に挙げていく。
そして――
「ハァァァァァ!!!」
少年は掛け声と共に高らかに天に伸ばし、網を持った手刀を風を切る音を響かせながら神速で振り下ろす。
そして水面に入る直前で手刀を止める、一瞬時間が止まったかのような静けさの後水面が左右に……割れた。
その割れた左右の空間の水面だけが盛り上がり、金魚が数匹割れた空間で空中に浮く。
その隙を逃さず少年は手が消えて見える程のスピードの網さばきで空中に浮いた全ての金魚をすくいバケツにほうり込む。
頬にかかる水しぶきもそのままに少年はニヤリと笑い宣った。
「俺の剣は魔術さえも切り裂く……金魚すくいなんて朝飯前だ!」
剣と金魚すくいにどういう関係があるのか分からないが、少年は自信満々に決めた。
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