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「なんか怖いぞヒロ……まあ、戦争が終わったら俺は王や貴族には邪魔者だからな。しかし民に支持されている勇者を王の一存で追放すれば反発が起こる」
ヒロは成る程と頷く。
「だから俺は死んだ事にしてもらったんだ……お互いの考えが一致したからな。まあ、普通は消される場合が多いんだろうが、俺を殺せる奴なんてあの貴族優良体制の王国になんていやしないしな。まあ、退職金はがっぽりもらったよ」
「なんで俺達に早く知らせないんだよ!!心配したんだぞ!!」
その言葉にヒューイは痛い所をつかれたとばかりに顔をしかめる。
「……だって住所聞き忘れてたし。俺死んでる訳だしおおっぴらに名前出して探せないだろ?」
「ヒューイ……うちは生きてるって信じてたからヒロの言葉気にせんでええよ?」
ランは笑顔でヒューイだけを見つめる。もう貴方しか見えないんだぜ!と言ったご様子で目をキラキラさせている。
「フッ……流石はラン。ヒロ見習えよ」
仕方ないやつだなとばかりにそう宣うヒューイ。
「くっ……なんで俺悪いみたいなってんだよ!?」
堪らず抗議するヒロではあるが……
「ラン……会いたかったぞ」
「……うちも」
見つめ合い二人だけの世界に入るバカップル。
「……ダーリンって呼んでええ?」
「……それは全力で断る」
何やらいちゃつく二人に対して、仲間外れなヒロは悲しそうに二人を見ている。
「もちろん……ヒロも会いたかったぞ」
当たり前だろと言うようにウインクして笑顔を向けるヒューイ。
「ヒューイ……この野郎!!心配かけやがって!!」
感極まり涙ぐみながら抱き着いてくるヒロ。
ハハハ、やっぱりこいつら、いとこだな。そっくりだ。
かつて悪魔と呼ばれた少年は初めてできた本当の仲間と共にその一歩を歩み出した……
エスラの赤い悪魔でもエスラの勇者でもなく、ただの友達のヒューイとして……
さあ行こう、祭はまだ始まったばかりだ。
三人の再開を祝福するかの様に花火が打ち上げられ、夜空を色とりどりに染め上げる。
三人の話はこれから紡がれて行く。
まずはランの焼きそばだな!
ヒューイは二人を抱き寄せ心からの笑顔を見せ、楽しそうに人込みへ混ざっていった。
~fin~
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