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「なっ……そんな理由でお祭り男爵と呼ばれてのか!?初めて知ったんだけど……有り得ないぞそれ」
少年は有り得ない程バカバカしく誇張され長い講釈にたじろぎ、一筋の汗を流しつつ引き攣った笑みを浮かべる。
「しっかし、お祭り男爵もこんな子供だったとはなぁ」
金魚屋の店主は少年の頭を撫でながらガハハと豪快に笑った。
そんな男を見つつ、少年は金魚屋の言葉に眉をひそめて疑問を口に出す。
「おっちゃん、お祭り男爵『も』って言ったか?」
少年の問いに金魚屋は意味ありげに笑う。
「ああ、ここの祭ではお祭り女王って言う坊主みたいな凄腕の女の子が毎年来るんだよ」
「へえ、それは会ってみたいな……そいつ今日も来てるのか?」
金魚屋は少年の問いに思案顔で腕を組み、ごつい髭をいじりながら首を傾げた。
「まだ見てはないが多分来てるんじゃないか?」
「フフフ……探してみるか」
そう呟いた少年を気に入ったのか、金魚屋は相手が嫌がるのも気にせずに頭をガシガシ撫でる。
「坊主、金魚返してくれたお礼だ。そこのお面でも買ってやるよ!」
そんな金魚屋に少年は遠慮せず偉そうに堂々と呟いた。
「そうか?嬉しいが俺はその隣のわた飴のがいいんだがな……」
金魚屋は少年の聞く人にとっては不愉快になりかねない物言いに、楽しそうに豪快に笑い放つ。
「ハハハハ!よし、両方買ってやるよ!……ところで坊主の名前はなんて言うんだ?」
「俺か?俺の名前は……ヒューイ――」
ヒューイはお面とわた飴を買ってもらい金魚屋を後にした。
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