お祭り男爵とお祭り女王のお話

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ヒューイは南大陸にある大国の一つであるエスラ王国の兵士をしている。 五年程前に竜に襲われ全てを失い村から旅立って以来、ただひたすらに力を求める為、そして一人で生きる為、山で剣の修業と狩りに明け暮れた。 どうやらヒューイには才能と言うだけでは片付けられない……そう…… 『力』が眠っていたようで二年経った頃には大木さえも一振りで真っ二つにする腕になっていた。 この時若干七歳であると言うのにも関わらずに…… まるで全てを失ったことにより内に眠っていた何かが目覚めたかのように、狂ったように力を求めていた。 さらに力を求め各地を放浪しては山賊を倒し、魔物が出たと聞けば魔物を狩り、強者との戦いを求めひたすら戦いの道を歩んだ。 力だけではなく経験も積んだヒューイはさらに強くなっていった。 そんな時ちょうど訪れていたこの大陸の南に位置する二つの大国、エスラとヴェノア王国が戦争を始めると聞きつけ、路銀も尽きかけていたこともあり大量募集していたエスラ王国の兵士に志願する事になる。 正直金がもらえればどちらの国でも良かった。 戦が始まり少年は持て余す力を振い暴れ狂った……敵はまるで少年の相手にならず一人で数百の敵兵士を倒す程であった。ヒューイの剣は鎧をまるで紙の様に切り裂き、消えたかと思う程の目では捉えきれない速度で動く、また弓や魔術士の魔術でさえも一振りの剣撃で切り裂く。 また不思議な事にヒューイは大きな力を使う時にはこの大陸では珍しい赤い瞳が深紅に輝き出す。 目を爛々と深紅に輝かせ数百人の返り血を浴びながら敵を倒すその姿はまるで悪魔の様で『エスラの赤い悪魔』と呼ばれ恐れられていた。 そんな功績を称え、近々王直属の七つの騎士団の隊長に就任することになった。 実際には王がヒューイの力を恐れる余りに、機嫌を損なわぬ為に役職を与えたのであるが…… 初めて人に認められ浮かれている、まだ年の頃十に過ぎない少年には知るよしもはなかった。 そのヒューイがなぜ祭に来ているかというと時は一月程前に遡る――――
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