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カラオケは嫌いじゃない。
かといって好きな訳でもない。
レパートリーが少ないので、直ぐに歌は途切れてしまった。
それにしても、この床にうめきながら横向きに倒れている男が目障り。
あたしのせっかくの新しい洋服も汚されてしまった。
血液は洗濯をしてもなかなか落ちないから厄介だ。
倒れてうずくまっている男から床にかけて、赤いシミが徐々に拡大していく。
男は奇妙な声を上げながら、腹に深く突き刺さっているナイフをゆっくり抜こうとしていた。
歌いたい曲はもうない。
もう、ここにいる理由もない。
一度掴んだ飲み掛けのカシスソーダをそのまま手離す。
身支度を整え、あたしは一人で部屋を出た。
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