6人が本棚に入れています
本棚に追加
言うの部・2
ミナはキョースケに対して、少しばかり怒りを覚えていた。
話しもせずに逝ってしまうなんて、卑怯だ。
私が起きてる時に訃報を報せるなんて、酷い。
それはキョースケにではなく、ほとんど神に対しての不平不満であった
ミナはキョースケが好きだった。
背はあまり高くなく、ルックスもまあどちらかといえばカッコいい程度の、しかも喋り方はかなりおかしな男に、何故だかミナは惹きつけられていた。
だから、よけいに悲しいし、悔しい。
結果はどうであれ、思いを伝えられなかったのが、ミナはかなり苦しかった。
だから、ミナは生まれて初めて、『睡眠堕波』に体を預けた。まさに不貞寝だ。
注)体験談は、本人にしか語る事ができない。
ミナは瞑想にふけった
…ここは、どこ?
周りは、■真っ暗■
何も無い。いや、暗闇がある、と言った方が良いのだろうか。
…でも、不思議と落ち着く。感覚的に言えば、羊水の中と同じ、妙な浮遊感がある感じ。
ここならば私は、傷を癒すことができるかもしれない。過去を忘れ去ることができるかもしれない。
今日、私の大切な人が…死んだ。突然の報せだった。しかもそれは、不特定多数の人に向けて発信された情報。
そのことが、私を更に悲しませた。
私は、彼にとって特別ではない。そんなことわかりきってた。もしかしたら、避けられてたかもしれない。嫌われてたかもしれない。
でも、私は彼が好きだった。その思いは、彼がいなくなったからといって、すぐに綺麗さっぱり消え去ってしまうような、簡易なものではない。
真っ白なジグソーパズルのように、複雑で、難解な気持ち。
何故ならば、私にも、その気持ちの核心が見えていないから。わからないから。
本人にも理解できない気持ち。
そんなのおかしいかもしれない。
でも…実際にあるんだから、しょうがない。経験論。
明日になったら、何か変わるかな。
そんな無駄な希望を抱きたくなる程の絶望感が、私を蝕んでいく。
突如、暗闇が赤くなる。真紅(深紅)の薔薇のような、赤。赤。赤。
飲み込まれていく私。
これは…血!?
SOS。助けて。誰か。私が完全に飲み込まれる前に。誰か。助けて。誰か。
差し伸ばされた手。それに掴まる。
誰?ああ…
夢だとわかっていても、覚めて欲しくなかった。
キョースケ…
そこには、死んだはずの彼がいた。
最初のコメントを投稿しよう!