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結うの部・1
「さて、謎解きの時間といくにゃ」
『にゃ』
これがキョースケの癖だった。
猫探偵は本当に猫のような容姿と性格をしている。
つけているネコミミとネコのテ、シッポの所謂『萌え』の組み合わせは、小さくて女顔のキョースケによくマッチしていた
「ミナ、どうしてわかったのかにゃ?」
「うん…、まず犯人は探偵の三人って言ったから、キョースケがいないということを知ってる。でも決め手は『今日病治す、祝ひ』」
「ああ!なんだ、そういうことか」
マリオが感嘆したように言った
「ミナ、君はすごいな。アナグラムに一瞬で気付くなんて」
「アナグラム?入れ替えると別の意味になるやつ?」
「そう。『きょうやまいなおす、いわひ』は『い』は『ひ』だから『きょうやまひなおす』になる」
「え~と…『いわひ』で『い』は『ひ』ってこと?」
「そう。『きょうやまひなおす』は…」
「並び変えると『ひやまきょうなおす』だ!あれ?でも意味通じてないよ…?」
「置き換えが重要。『病を治す』は『病を消す』とも言える。
すると『きょうやまひなおす』は『きょうやまひけす』になる。並び変えて『ひやまきょうすけ』→『檜山響介』」
アナグラム。それは世界でもトップクラスの難解な言語『日本語』でしかできないものである。
―――言葉ってすごい!
カヤは素直に感心した
「檜山君、何でこんな事を?」
「ああ、ちょっとした悪戯心で、ちょっとにゃ。最近事件が無いから、みんなが鈍ってないか心配で…。いやしかし驚いたにゃ。まさかキョースケと同姓同名の方がにゃくにゃるにゃんてにゃ。可哀相に…」補足『亡くなるなんてな』
「あの、檜山君」
ミナが聞きにくい事を尋ねる。彼女に取って最も大切なこと。先ほどからずっと残っていた、しこり
「穐山さんとは…どういう関係?」
「穐山さん?誰にゃ、それ」
「え?」
「響介、私のこと」
「にゃ~んだ、兄貴か。にゃんで穐山にゃんてにゃのってたんだい?」
「檜山、なんて名乗ったら、すぐばれるじゃない」
薫は三人の前で初めて笑った。
「穐山さんは、あ、いえ、薫さんは、男なんですか?」
「言ってなかったかしら?」
「いや、だって口調も…」
「兄貴はずっと女子ばかりと遊んでいたからにゃ~。いつの間にか、口調もうつってしまったのにゃ」
「…」
ミナの中のわだかまりが、溶けていく。
暖かい、春のような気持ち。それは安らぎだった
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