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自己紹介の部
自己紹介、というのは正しくないかもしれない。
何故なら私が彼らの事を紹介するわけであって、彼らが自分で自分を紹介するわけではないからだ。
しかし私は語ろうと思う。それが語り部として生まれた、私の義務だからである
さて、ここは大学の端の方にある、さして大きくも小さくもない、つまり何の変哲も無いキャンパス内の一室である。
今、三人の人間がここに居座っている。男女比は1対2。男性は椅子に座って、静かに読書をしている。女性の一人はそんな彼をつまらなそうに見て、溜め息をつき、壁に寄り掛かり目を閉じる。もう一人は椅子に逆さに座って、背凭れに顔を預けていた。
………………沈黙。
しかしそれは険悪なものでは無く、ある程度仲の良い仲間内でしか起こらない、気持ちの良い雰囲気だった。
そして、沈黙が破られる
「ねえ、キョースケ君はまだ来ないの?」
背凭れに乗せた頭を上げて、女性が言う
「そう慌てるな、カヤ。檜山は約束を破るような奴ではない」
カヤ、と呼ばれた少女は、頬をプ~ッ、と膨らますと
「も~、マリオ君、私キョースケ君を疑ったわけじゃないよ」
カヤは、子供っぽい性格の持ち主だった。さすがに、体は大人、頭脳は子供、というわけではないが、考え方の大半は子供っぽい所が多い。例えばケーキを分ける時には、じゃんけんで順番を決めて、勝った人から好きな大きさにわけて取っていく、という不公平かつ自己中心的な考えが正しいと思っているのだ
「そうか…。だが俺はカヤをバカにしたつもりはないぞ」
マリオ(本名→毬央)と呼ばれた男は、ゲームのようにキノコを食べてパワーアップ、などは当然しない。単純かつ論理的な思考、つまりカヤとは正反対の頭脳を持つ人物だった
「…ファァ…」
壁に寄り掛かっていた少女が小さなあくびをする
「およ?ミナ今日は熟睡無し?」
「湿気が多い…」
ミナと呼ばれた少女のあまりにもおかしな一言に、カヤは乾いた笑みを浮かべた。
「はは…は…。そういえば今日はジメジメだね」
「…」コクリ
ミナは頷く。とても眠そうだ。
彼女は持って生まれた特異体質『睡眠堕波(すいみんだは)』によって、何時如何なる時も睡眠を求めるようになっているのだ。副産物として、よく寝る彼女の肌はツル2のスベ2で、クマも無く、卵のようになめらかだった。
そんな彼女らが待つ、『檜山キョースケ』なる人物。彼がここに来ることは、もう無かった
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