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「な~に言ってんの!あの土方さんから仕事を任せてもらえるのなんて、花蓮ちゃんくらいだよ。俺たちは隊士の育成やら巡察やらばっかで、あの人雑務は全部やっちゃうじゃん!」
「それが、土方さんの優しさなんですよ。」
思いがけない花蓮の言葉に、言葉を発していた藤堂はもちろん一同黙る。
それもそのはず、花蓮の言う人物は優しさとは無縁な“鬼”なのだから。
「隊士の方を副長助勤のみなさんに任せきりだから、雑務は責任を持って自分がやるんだって…土方さんはそういう人ですよ。」
“鬼”の優しさ…。
普段なら、あまりにも不自然な響きに思わず笑いが漏れそうになるところだろう。
でも花蓮の言葉は変に説得力があり、皆納得させられてしまう。
「まったく、花蓮さんにはかないませんね。」
一番に沈黙を解いた沖田がクスリと笑う。
「…でもそんな土方さんから仕事を奪い取る私って、結構酷いヤツなんですけどね。」
「そんなことないっ!!」
苦笑する花蓮に間髪入れずに永倉が声をあげる。
「花蓮が土方さんのこと助けてくれるから、俺たちは安心して隊士の育成や巡察に力を注げるんだからっ!」
まだ永倉の言った言葉の意味が理解できていずにきょとんとする花蓮。
「俺もそこは、新八に賛成だな!それに土方さんだって絶対花蓮ちゃんに助けられてると思うよ。」
そう加えた藤堂の言葉で、花蓮はやっと二人が自分を励ましてくれているのだと悟る。
「…ありがとうございます。」
そう微笑む花蓮は思いがけずかわいくて、永倉は人知れず頬を染めた。
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