愛すべき日常

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「…さて、ごちそうさまでした。」 花蓮が出したお茶を飲みほすと、沖田はゆっくり茶碗を置いて立ち上がった。 「土方さんの部屋に資料を運ぶんでしょう?手伝いますよ。」 「…!どうしてわかったんですか?」 沖田さんは永倉さんたち三人と私の、彼がくる以前の会話を聞いていなかったはずなのに…と花蓮は沖田を見上げる。 「あれを見たらわかりますよ。」 縁側から覗く花蓮の部屋。 そちらを指差して沖田は微笑んだ。 「しっかり十個に別れてますしね。」 「…あ、なるほど。」 花蓮の部屋には、確かに一から十番隊に振り分けた隊士の資料がそれぞれの山を作っている。 「それにしても、仕事が早いですね。土方さんの物言いから、私は花蓮さんとは入れ違いくらいに土方さんの部屋に行ったと思ったんですが…。」 「難しいところは全部土方さんがやってくださってましたから!各隊の頭が決まっていたので、私はその隊に合う隊士を人数通りに振り分けただけですよ。」 至極簡単なことをしたと断言する花蓮。 土方さんが同じ仕事をしたら、どれくらいの時間がかかるんだろうなどと考えながら、沖田は苦笑して聞いていた。 「でもすみません、私が奪うように土方さんのところから持って来た仕事なのに、沖田さんに手伝わせてしまって…。」 「いいんですよ、私が言い出したことですから。今日は非番ですし、それに運ぶくらいのことは手伝いのうちに入りませんよ。」 花蓮は沖田にもう一度お礼を言うと、資料を持って土方の部屋を目指した。
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