愛すべき日常

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それは、絵に描いたような空。 少し肌寒い風が、どこからかさわやかな気持ちを運んでくる。 ぐっと深呼吸でもすれば肺の底から洗われるような、気持ちのいい天気。 「土方さん、入りますよ?」 花蓮は目の前の部屋に入るべく、その主に許可を求める。 「ああ。」 部屋の中からはぶっきらぼうにそう返事が返ってくる。 花蓮はそっと膝をつくと襖に手をかけ、静かに横に引いた。 「お茶、持って来ました。」 「ああ。」 返ってくるのは同じ返事。 中を見てみれば、声の主はこちらをチラリとも確認することなく、机の上の山積みの書類とにらめっこしていた。 「ちょっと、一人で抱えすぎじゃありませんか?」 ゆっくり襖を閉めると、花蓮はため息と共にそう漏らした。 「今は大事な時期なんだから仕方ないだろうが。大変そうだと思うんだったら邪魔するな。」 「山南さんがいらっしゃらない今、貴方に仕事が多く回ってくるのは仕方ないことかもしれませんが…もう少し他人を頼ったらどうですか?」 邪魔するな、との言葉は一切無視して花蓮は続けた。 「…誰に頼れるっていうんだよ?総司にでもやらせろってか?」 花蓮の言葉を鼻で笑い飛ばす土方。 花蓮はゆっくり立ち上がるとお茶を土方の足許の安全そうな場所を探して置き、机の横に座った。 「私を頼ってください。」 そう言って、机の上の書類を奪い取る。 「花蓮!」 やっと手元の書類から目を離し、土方は顔を上げて花蓮を見た。 まるで土方がその行動をとることを予想していたかのように、花蓮は土方と目を合わせてニッと笑う。 「…私じゃ任せられないって貴方が言うなら、止めますけど?」 貴方はそうは言わないでしょう? 言外にそう述べる彼女の目に、土方は小さくため息をついた。 「…悪いな、花蓮。」 呟くような小さな声で礼を述べ、土方は再び資料へと目を通し始める。
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