愛すべき日常

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「…土方さん、知っていますか?花蓮さんはこの新撰組の隊士のほとんどを把握してますよ。」 子供のような雰囲気から一変、沖田は大人びた空気を漂わせてそう言った。 「…お前、ここに隊士が何人いるか知ってるか?」 バカなことを言うな、とでも言いたげに土方はため息混じりにそう言った。 「はい。」 返って来た答えは予想外にはっきりしていて、土方は思わず沖田を見つめた。 「…把握してるんです、花蓮さんは。名前だけじゃなく、剣の腕前からちょっとした癖まで。」 傍目には沖田は能天気で何も考えていないように見えるが、キレる男だ。 妖艶な笑みを浮かべる今のこの沖田が、土方に嘘を告げることはない。 「それが本当なら、恐ろしい能力だな。」 嘘だと疑ってはいなかった。 くわえていたキセルを唇から離し、長い息を吐く。 「だから、花蓮さんにしたら組分けは簡単なんですよ。資料に目を通す必要がありませんから。どこに誰を置くべきか、一番よくわかってる人です。」 ね?と微笑む沖田に、土方は負けたというようにため息を一つ。 「……ま、済んじまったことをうだうだ言ったところで何も始まらないからな。お前がそこまで言うなら、任せてもいいが…いいのか?お前、変なとこに入れられるかもしれねぇぞ?」 土方はからかうように沖田を見る。 沖田は邪気の無い笑顔でにっこり微笑んだ。 「大丈夫ですよ、彼女は頭いいですから。そんなことしたらどうなるか、わかってると思います。」
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