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「どうだね、歳?総司の様子は。」
襖を開け、近藤が入って来る。
「相変わらずだ。全く動かねぇ。…火事の騒動の方はどうなった?」
近藤はゆっくり土方の隣に座った。
「何も起こりはしなかったさ。この雨で火も手間なく消えた。ただ、犯人と思われる人物の死体が見つかった。」
「死体?」
「ああ、懐から大量の油が見つかっている。間違いないだろう。現場から少し離れたところで三人、斬り殺されていた。そこから少し離れたところでも、七つの長州志士の死体が見つかったぞ。」
土方が大きく舌打ちして横たわる沖田を睨みつける。
「……この馬鹿。」
「近隣の人の情報では、若い夫婦が火事の犯人を追ったそうだ。」
土方がふっと苦笑する。
「…夫婦ねぇ…。」
新撰組としてではなく、一般人として火事の犯人を追ったのだろう。
自分たちの任務が密使であることはわかってはいたわけだ。
「歳、目覚めても総司たちを責めるなよ。」
総司たちは何も間違ったことはしていない。
近藤は釘を刺すようにそう言った。
「報告次第だろ。」
土方はふんとそっぽを向いてそう言った。
「それより、花蓮の方はどうなんだ?」
「総司より軽い。外傷もない。気を失っているのは当て身か何かを受けたせいだろうと医者が言っていた。総司が羽織りをかけて連れてきたせいか、体温もそれほど異常ないらしい。今は山南くんと永倉くんがついてる。」
花蓮に羽織りをかける頭があったなら、自分も羽織りをかける頭も持ってて欲しかったものだと医者がぼやいていた、と近藤は笑った。
まったく、そういうところが沖田らしいな、と土方も苦笑する。
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