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「…それで、これからどうするつもりだ、歳よ?」
近藤の言葉に、土方はふぅと息をついた。
隊士たちは既に熱くなっている。
仲間がやられた。
それも、最強と名高い沖田が。
花蓮に実力があることを知らない隊士たちは、殺されていた長州志士合わせて十人が沖田を襲ったのだと想像を膨らませては喚いている。
「花蓮殿を守りながらの十対一とは卑怯極まりない!!」
「我らが沖田先生に代わって報復をするのだっ!!」
「長州の田舎侍に、新撰組の強さを見せてやる!!」
そんな声が響き渡る道場。
原田・藤堂に押さえるよう命じてはあるが、血気盛んな連中だ。
どこまで押さえられるかわかったもんじゃない。
かと言って今長州志士のもとへ乗り込めば、この京で何かを企もうとしている連中が逃げてしまいかねない。
土方は頭を抱えた。
「今攻めるわけにはいかんだろう?」
まぁな、と土方はため息をつく。
「よし、じゃあ俺が行ってこよう。」
「おいおい、近藤さん!?」
立ち上がった近藤を土方が見上げる。
「歳、お前は総司についてやってくれ。隊士の方は俺がなんとかしよう。」
ニカッと笑う近藤に、土方は諦めたように苦笑した。
「わかった。あんたに任せるよ。」
「総司を頼むぞ。」
近藤は襖を閉め、道場へと向かった。
残された土方は眠る沖田に目を向ける。
長州志士十人と斬り合った。
確かにそうだろう。
見つかった死体は沖田が作ったものと考えて間違いない。
“…土方さんに……報告を…”
途切れそうな意識の中でも、土方に報告しようとしていた沖田。
襲われたことを?
密使の任を遂げられなかったことを?
違う。
何かあったんだ。
殺された十人以外に、沖田と花蓮を襲った者がいたはず。
花蓮は副長助勤と対等くらいの実力を持つ。
その二人が苦戦するほどの誰かが、少なくとも二人は…。
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