甦る傷痕

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……放せっ!! 引っ張っても捻っても、びくともしない腕。 ……私に…触るなっ! 睨みつける顔。 たぶん、私は憎しみと怒りで酷い顔をしていると思う。 なのにそれを面白がるかのように口の端を吊り上げる男。 それが無性に腹立たしい。 その男をすり抜けようと必死に引っ張るが、相変わらず向こうは顔色一つ変えない。 ……殺す! 殺してやりたい。 この目の前の男を…。 今刀を貰えれば、何の躊躇いもなく殺れる。 真っ二つにできる気がする。 そしてたぶん、私は笑うんだろう。 この男の亡骸の前で、声をあげて笑うんだろう。 それが今の私にできる、唯一のこの男への勝利。 “殺せ” 男の声が、後ろの部下たちに命じる。 ……やめろっ! その人は関係ないっ!! 男は嬉しそうに、自分の部下と抗戦する彼と私を交互に見つめていた。 嫌な笑みを浮かべて。 ……やめろ! やめろやめろやめろやめろっ!! 私が叫ぶ度に、男は微笑む。 遂には堪えきれずに高笑いする始末。 絶望が襲った。 この男…… ―――人間じゃない 「沖田さ――んっっ!!!」 はっ! 瞳に映る天井。 知っている景色。 知っている匂い。 「……新…撰組…?」 ぽつりと呟く花蓮の視界に、バッと現れる二人の姿。 「気がついたか、花蓮っ!?」 「花蓮!」 急き込むように声をあげる二人。 花蓮は二人を交互に見つめた。 「永倉さん…山南さん……。」 二人はほっとしたように顔を合わせた。 「大丈夫かい、花蓮?どこか痛むところは?」 山南は言いながら花蓮が起き上がるのを支えてくれた。 黙って首を振る花蓮。 「……沖田さん…。」 視点をふよふよとさ迷わせながら、花蓮は独り言のように呟いた。 しかし次にはバッと山南の顔を見つめる。 泣き出しそうな瞳で。 「沖田さんはっ!!?」
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