甦る傷痕

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「ちょっ!ちょっと落ち着けって!!」 「煩い、放せっ!」 「君も病人なんだよ!?まだ動いたら…。」 「そうだ!だからちょっと待てって!!」 「邪魔するなっ!!」 突然騒々しくなる廊下。 土方は身を反り返した。 重なる三つの声は、どれもよく知るものだ。 「待ちなさいっ!」 「私に構うなと言っているっ!!」 「んなことできるかっ!いいから布団に戻れよ!!」 「触るな!!」 土方は襖を開け廊下へ出た。 思った通り、揉め合う三人。 …と言うより、暴走する花蓮を永倉・山南が必死に止めているという光景だ。 「…なにやってんだ、お前?」 怒りを顔に滲ませて土方が言葉を吐く。 「土方さん…。」 「どけっ!」 土方の登場で一瞬緩んだ永倉の手を振り払い、花蓮は土方めがけて走る。 「花蓮!?」 伸ばした土方の腕をスルリとかわしてすり抜ける。 そのまま沖田の部屋の襖を全力で開く。 「沖田さんっ!!」 温かい部屋。 横たわる沖田。 「沖田さん!!」 叫ぶ花蓮。 沖田に飛びかからんばかりに走り出す花蓮を、後ろから土方が抱き抱える。 「放せ!」 土方相手でもこの口調。 パニックだな、と土方は必死に花蓮を押さえつける。 「沖田さんっ!」 沖田へ伸ばされた腕を掴み、仰向けに押し倒すと土方は花蓮に覆い被さる形で動きを封じる。 「死んじゃいねぇよっ!!」 土方の怒声に、はっとする花蓮。 動きの止まった花蓮に、土方はふっと優しく微笑む。 「勝手に殺すな、馬鹿。」 「…………ふぇ…っ。」 花蓮の瞳を一斉に涙が覆った。 土方が手を緩めれば、バッと土方の首に手を回して声をあげて泣く。 「ぅ…っ……ぅわあぁぁっ!!」 土方はそっと花蓮の背中に手を回してぽんぽんと叩いてやる。 永倉と山南は、呆然とその様子を見守っていた。
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