甦る傷痕

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花蓮がもう一度目を覚ました時は、既に日付が変わっていた。 気が付けばまた布団にいて、ぼんやりと天井が見える。 ……あれ? 記憶を辿るもなぜ自分がここにいるのかわからない。 それ以前に、前に一度目は覚ましたはずなのにあまり記憶になかった。 “死んじゃいねぇよ” 土方のその言葉だけが、酷く印象強く残っている。 …死んでない…。 その事実に、まずは安堵だ。 花蓮はゆっくりと体を起こした。 「………。」 目に入る、山南と永倉の姿。 山南は胡座に頬杖をのせたまま、そして永倉は床にコトリと倒れて、それぞれ眠っていた。 ……ずっと、ついててくれたんだ。 花蓮は嬉しくなって思わず頬をゆるませた。 「…花蓮っ!」 そんな花蓮の気配を感じてか、永倉が起き上がった。 永倉の声ではっと山南も目を覚ます。 「具合はどうだ!?」 慌てて花蓮の顔を覗き込む永倉に、花蓮はとびきりの笑顔を向けた。 「大丈夫です。ありがとうございます。」 いつもの花蓮だ…。 「そ…っか、よかった。」 ほっと胸を撫でおろす永倉。 「じゃぁ私は、朝食を持って来よう。」 花蓮の様子に安堵した山南が微笑んで立ち上がった。 「山南さん!それは私の仕事ですよ。」 立ち上がろうとした花蓮を山南は手で静止した。 「いつもやってもらってるんだ。こんな時くらいはやらせてくれ。」 山南の優しい笑顔に、花蓮ははにかんみながら、じゃぁ…お言葉に甘えて、と言った。 「ずっと、ついててくれたんですね。」 「…そりゃあまあ、心配だからな。」 花蓮の言葉に、永倉は照れ臭そうにそう言った。 「ありがとうございます、永倉さん。」 「…俺は別にいいから、山南さんにちゃんとお礼言うんだぞ。」 真っ赤になりながら、永倉はうつ向いた。
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