甦る傷痕

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食事を終えると、花蓮の仕事は再開する。 一緒に花蓮の部屋で食事をとった永倉・山南のお膳を自分のとまとめて片付けると、自室に戻り布団を畳んだ。 永倉はまだ寝ていろと言ったが、花蓮はきかなかった。 やるべきことが…やらなければならないことがある。 花蓮は身支度を整えると部屋を出た。 土方の部屋を目指して。 一番行きたいのは、沖田の部屋だ。 安否を確認したい。 無事を確認したい。 謝りたい。 でも、感情を優先するのは全てが終わってからだ。 まだ花蓮は、任務を果たしてない。 報告しなければ。 何があったのか、私の口で。 「土方さん、入ってもいいですか?」 少し緊張した面持ちで花蓮は言った。 「ああ。」 いつもと同じ返事。 一息ついてから、花蓮は襖を開けた。 「…………。」 目を見開いたまま、動けなくなった。 目に飛び込んで来た人は、昨日と同じように微笑んでいる。 「おはようございます、花蓮さん。」 しばらく呆然と見つめたあと、唇を噛み締めて目を閉じた。 …ダメだ……。 必死に自分に言い聞かせる。 まだダメだ。 感情を優先するには、まだ早い。 「……おはようございます、沖田さん。」 ようやく顔をあげると、無理矢理笑顔を作ってそう言った。 「入り口にいないで、さっさと入れ。」 土方がしょうがない奴らだなと言わんばかりに苦笑しながらそう言った。 「はい。」 花蓮は襖を閉めると沖田の隣に座った。 「…報告、させてください。」 「聞こう。」
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