甦る傷痕

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「吉田稔麿に、岡田以蔵…!?」 さすがに目を見張る土方。 沖田・花蓮からの報告は、正直信じ難い。 しかし、だからこそ逆に納得できた。 この二人があのような状態になったのも。 「…長州志士を集めたのは、このためか。」 苦々しく土方は言い放った。 「土方さん。吉田稔麿という男は、自分の望みを貫くためならば手段を選ばない人間です。」 花蓮ははっきりと断言する。 「ここ最近京で起きている複数の火事をご存知ですか?」 土方がはっと花蓮を見た。 真剣な眼差しが土方を見据えている。 「吉田稔麿の仕業だと思います。」 「長州から出てきてあの男が、京に火を付けて何の得があるってんだ?」 土方の言葉に花蓮はうつ向く。 あの男の考えることはわかりかねる。 人が思いもつかない残忍な手を、サラッとやってみせるヤツだ。 「詳しくはわかりませんが…実際私が斬った昨日の火付け士は、吉田稔麿が黒幕だと言いましたよ。」 沖田の言葉に土方は眉間に皺を寄せた。 花蓮はやはりそうかと目を閉じる。 「私を、およがせてください。」 花蓮が思いがけない提案をした。 「吉田稔麿は、必ず私にまた接触を取ってくるはずです。私が新撰組にいるとわかったなら、なおさら。」 「………ダメだ。」 「土方さん!これはただ貴方たちに協力してるんじゃありません。私の望みなんです!」 睨むように土方を見ながら花蓮は彼の言葉を待った。 土方は許可する。 そういう自信があった。 隊士でもない、ただ私怨で動いてる花蓮が囮になると申し出ているのだ。 そしてそれが彼の…いや、新撰組のためになるのだから。
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