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「………総司。」
土方は少し考えた後、目の前に座る沖田を呼ぶ。
「はい?」
黙って聞いていた沖田が返事をした。
「お前は…どう思う?」
花蓮は思わず土方を見つめた。
しかし土方はそんな花蓮は気にもとめずにじっと沖田を見た。
探るような、射抜くような瞳で。
「………。」
少しの間、沈黙が流れた。
「私は吉田稔麿という人物と刀を交えたわけではないのでわかりませんが…花蓮さんを囮にするのは少し、危険すぎる気がします。」
言葉を選ぶように、ゆっくりと沖田はそう言った。
「囮が必要なら、私がやります。」
「おっ…沖田さん!?」
突然の沖田の申し出に花蓮が声をあげた。
一方で土方は額に手を当ててため息をついた。
「吉田稔麿という人は、私は知りません。ですが岡田以蔵…。彼はこのまま黙っていないと思います。彼を引っ張ることができれば、自然に吉田に辿り着くでしょう?」
ニヤリと微笑む沖田に花蓮は表情を歪めた。
「――ダメです!絶対ダメ!!沖田さんがそんな危ないことするなんて、私は反対ですっ!!」
「花蓮さんだって同じことをやろうとしてるじゃないですか。だったら私の方がいいでしょう?」
「相手が違います!あの岡田以蔵ですよ!?沖田さんに何かあったらどうするんですか!?」
「吉田だって危険人物です!貴女だって充分危険なことをやろうとしてるんですよ?」
「だあぁっ!!いいから少し黙れ二人共!」
土方の怒声に、沈黙が流れた。
「結論から言えば、囮はいらねぇ。」
「…えっ…。でも土方さ…。」
「いらねぇ!!」
強く遮られ、花蓮は言葉をなくす。
「正確に言えば、囮なんて真似しなくても奴らは仕掛けてくるって話だ。」
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