2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
僕はある日の夕焼けを見つめていた。
土手のそば。誰もいない静かな所で。
ただ一人。遠くを見つめていた。
僕は悲しみに打ちひしがれ、そして泣いていた。
すると突然、前からか、川の上からか、(いや、そんなことはどちらでもいい。)僕をそっと見つめ返し、慰めるかのように話かけてくる者がいた。
「私は知っている。あなたの悲しみ。あなたの涙。痛いほどよくわかる。」
僕は、はっと顔を上げた。
しかし、その場には人影はない。
冬の冷たい風が僕の心のすき間へと入りこむのがわかる。
するともう一度あの声がした。
「私はここ。そう、あなたの上よ。」
僕は言われるがまま上を見上げた。
僕は、「鳥か。いや、違う。夕焼けか。」そう言うと、またあの声が、「そう、私は夕焼け。そんなに悲しまないで。私はあなたをいつも見守っているから。」
僕は思い出したかのように、止まったはずの涙がまた流れ、「ありがとう。」と言い、その場から立ち去った。
ちょうどクリスマスだった。
町のあかりは歌をかなで、人々はたえず道を歩いている。
僕は今日も一人。
目から流れる涙をふき、空を見上げた。
白い雪がこの冬を楽しむかのように踊っている。
冷たくなった小さな手を僕はポケットへ投げ入れた。
僕はうつむき、また、ただはてしない道を歩き始めた。
すると、後ろの方から僕を呼ぶ声がした。
最初のコメントを投稿しよう!