【ACT.3】素性

3/3
前へ
/24ページ
次へ
「それはもう【決まり】でしょう」 決め兼ねている自分に、彼は何の躊躇もなく言い放った。 「なぜそう言い切れる? 僕は相手の名前しか知らないというのに……」 「では逆に聞くが、 その【名前しか知らない平凡な奴】に、 ウチきっての天才スカウターである【木村千秋】が、 タバコを吸うことすら忘れる程にのめり込んでいた………と?」 「………!!!」 ハッ、と自分の事務机に置いてある灰皿に目を向ける…… あれ程モヤモヤと、イライラを解消するために吸っていたタバコを1本も吸っていないという事実に、今更ながら気付かされた。 「完全に依存症――彼を知ったらもっと手放せなくなるんじゃないのか?」 その言葉に、千秋の迷いは完全に吹っ切れた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加