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テントから出て林を切り開いた獣道を進んで行くと、開けた広場に並ぶ長机と備え付けの椅子に腰掛けた見知った顔が。それぞれ朝食を取っていた
まわりを見るが他の机には誰もいない――ここのサバイバル訓練キャンプ場は、敷地の問題から交代制なので、他のグループと被ることは滅多に会わないのだが
「比野か――遅刻、罰金」
突然、異様に真っ白な髪を持った小柄の少年、久原 志度が僕の皿から貴重な栄養源であるハムを一片もっていった
「志度、人のおかずを盗るなとあれほどだな」
「寝坊犯がなんか文句ある?」
「……ないです」
妙に痛いところを突いてくるな……そんなに腹減ってるのか
志度は僕から徴収したハムをフォークで器用に丸めると、端からもぐもぐと食べ始めた
「……ふぅ、それにしても比野の寝相は毎回凄いな。一種の尊敬すら覚える」
「え?」
ハムをもそもそさせ終えた志度が、逆さ寝袋窒息未遂事件に関するであろう発言をした。曰く、他意的な原因は無いと言っているようだが
「そんなに……凄かった?」
「あんな狭い寝袋の中で180゜回転できるって、実は関節柔らかい?」
「そりゃあ身体が硬いと色々困るだろ職業柄、柔軟体操は大事だ――というか、あの状況はいたずらでもなんでもなく僕自身が原因だったのか……」
この年になって寝相が悪いという事実が発覚し、もう間接がどうとかどうでもいいやと結論を出して軽くネガティブな気持ちになる
「……鬱になったから更にパンも没収な」
お前に食わせる食料はねぇ、と居ずらい空気になったからか、そう言って志度は僕のパンを攫って咥えると、自分の配膳を片付けに行ってしった
……朝食の残り、食パンとハムが一枚ずつ
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