プロローグ

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僕の名前は    。 お母さんとお父さんがくれた僕だけの名前、大好きな人がくれた――でも二人共爆ぜて死んだ。あまりにもあっけなかった。名前だけ残して逝った     くん、遊ぼうよ 友達もいた。沢山とは言えないけれど、それなりにいた。でもほとんどが焼けるか押し潰されるか穴だらけになって死んだ。思い出以外は残らなかった また、いつか会おうね? そう約束した数少ない友達も事故で一人残らず死んだ。悲しさだけしか残さなかった     ちゃん、こんにちは 親しかった大人の人達も同じよう死んだ。――こいつらは何も残さず消え失せた 「……ぁー」 ある日、僕はある法則を見つけた。他人が聞いたら呆れるだろう、何の根拠もない方程式――何も残らなくなる。悪魔の計算式 まずは名前を隠した。新しく、自分で付けた。付けた時にお母さんとお父さんに謝った 次は性格、上手く出来ないから、色々な口調をできるように練習した。一つの形に固まり難くなった 最後に、今までの「中身」を出来るだけ、捨てられるだけ捨てる。でも……全部は消せなかったから、それは大事にしまっておく 僕は、新しい僕だけ残して消えた
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