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「なんだ剛か……元気してた?」
開けっ放しの入口から出てきたのは、筋肉質な同僚だった
「……少なくともお前よりは健康体だ。なにせ相手が雑魚だったからな」
俺は相手が良かったが、お前は相手が悪かった。それだけだ と、剛は至極冷蔵に言ってのける
「……冷徹人間め……ポジションが逆だったら良かったんだよ、宇佐美さん辺りなら三機同時でも圧倒してただろうし」
なにせ、射撃以外なら剛より強いのだ。人間国宝にしてもいいんじゃないだろうか?
「ふん。まさか奪った機体であそこまでやれる奴がいるとは思わなかったのでな――過ぎたことだ。気にするな」
それがわかっていれば俺と宇佐美で相手したものを…… とか言ってる脳味噌筋肉に枕を投げ付けプチ復讐
「危く死にそうになったのに気にしない奴がいるかこの野郎……!」「そうだ。酒でも発注しておけ」「なんでだよ!」
思わず叫ぶ僕を無視して一枚の用紙――すでにハブ焼酎と書かれたそれを押し付けた
「お前のTk-9――右腕部とセンサーの大破、それにAIに致命的なバグが発生したらしい。動かなくなったのは機体損傷よりもそっちが原因らしい……担当者が来たと思うが」
「あれバグだったのか……うーん」
腕を組んで二度目のシンキングタイム。思い当たるとすれば、あのスパナ女性士官だが
(まさかな……)
「来てないけど?」
もしかしたらさっきの人がそうだったのかもしれないが、スパナで撲殺しようとした人が担当だとは思いたくなかった
「そうか、来てないのか……まぁそのうち来るだろうから、何かあるなら報告しておけ。それでは、お大事にな」
言って、普通にドアを閉めて出て行った。あと報告しに行ったら半殺しくらいされるよ僕
「……はぁ」
ちらっと発注用紙を見て祈る
――どうか、整備長の怒りが和らぎますように
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