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1999年、春
新しい制服に身をまとい、ウキウキ気分の鈴木優梨。
この春、彼女は中学生になったのだ。
彼女の家庭は少し厳しかったため、中学に通うと同時に、地元では少し有名な進学塾に通うことになった。
色々な中学から生徒が通うので、友達ができるかどうか、また、勉強についていけるかどうか希望と不安が交差していた。
始めは慣れないところもあったが、優梨は一生懸命ついていけるよう努力した。
同じ中学から仲の良い友達、「あや」もこの塾に通っていて、休憩時間などはいつも一緒に行動していた。
中学生といえば、思春期を迎え、恋愛に興味を持ち始める時期だ。
だからこそ、あやとの会話はいつも「恋バナ」だった。
「ねぇねぇあの先生かっこよくない?」
「ホントだ!うちらの先生にいつかなんないかなぁ?」
塾に入った当初からこの調子だった。
ある日、あやが塾の廊下で1人の男性講師を見て優梨に言った。
「あの先生もかっこよくない?」
――いつも通りの会話だ。
「えーそう?前言ってた先生の方がかっこいいよ」
あやと優梨は好みが似ているので、いつも男性については意気投合するのだが、この日は違った。
スラッとしモデルのような体型、目鼻立ちがくっきりしていて、まさにイケメンと言えるほどの容姿。
このタイプの男性は優梨の好みに合っているのだが、何かしっくりこなかったらしい。
ようやく中学、塾も楽しめてきた夏。
国語の時間になったので、みんなはざわつきながらもきちんと教室には居る。
その時―
「あっ!」
優梨は一瞬でわかった。
入って来たのは、あやとの話題に出てた、あの先生だ。
一度はあやに対して否定したが、何か引き付けられるものがあったのか、ボーッとその先生を見つめ、いつしかカッコイイとまで思っていたのだ。
最初の授業でお馴染みの、先生の自己紹介が始まった。
「原田慎吾です。年は26歳、A型で蟹座、独身です」
入塾したときには違う国語担当がいたのに何故こんな中途半端な時期に先生が代わったのかはよくわからなかった。
そんなことを考えてる間に…
「先生について質問のある人ー?」
またお決まりな質問だ。
だが、みんなもこの原田先生のことをカッコイイと思ったのか、どんどん手が挙がる
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