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ギュッギュと雪を踏みしめる快感を想像しながら、屋上に飛び出した。
しかし、僕は一番乗りではなかった。
屋上出入り口から、漆黒の暗闇に広がる銀世界に足跡が続いていた。
足跡から推測できる人数は一人。
「僕は内心むっとしたよ。だってそうだろう? 無垢な“僕の”雪がすでに汚されていたのだから」
でも、その足跡は雪を踏みしめて遊んだ、というよりもどこかへ一直線に向かっていた。
僕はその足跡に惹かれるように、少し横の真新しい雪を踏みしめて歩いていった。
━━ギュッギュ
雪を踏みしめながら、その足跡が導くマンション屋上の片隅に向かった。
よく見れば、先客の足跡はすでにその上からうっすら雪をかぶっている。
戻ってきた足跡は無い。
まだいるのはすぐにわかった。
暫く雪を踏みしめる感触を楽しみながら進んで行くと、屋上の端にたたずむ君がいた。
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